いや、超おもしろい、この本。上下巻で本編だけで600ページを越える本だけど、ニューヨークタイムス記者のAndrew Ross Sorkinの素晴らしい取材、なのかな、その記録。マジで高杉良の経済小説読むならこれの方が単純に面白い。ギリギリの状態で誰が何をして何をしなかったかがわかる。
 自分的にはポールソンの立場に同情してしまった。結局彼はこの件で矢面に立たされっぱなしな訳だけど、同情せざるを得ない。そして読めば読む程リーマンをあそこで破綻させたのは”結果的には”裏目だったのかもなとも思うし。
 あとは分刻みといえるようなリーマン最後の日々の記述がすげー。関係者各位がそれぞれの役職で(別にそれが全体最適ではない)あらゆる可能性を探る。その中でリーマンの会長なんかはもう完全に蚊帳の外で相手にもされず、あちらに電話しては振られこちらと交渉しては行き詰まり、最終的には連邦破産法11章を申請して死んでいくのだけど、バークレイズとの合併を英政府が拒んだのはとどめだったな。

 あ、この本はリーマン以外のAIGとモルガン・スタンレー、ゴールドマンサックスについても書いてある。超びっくりするのがMUFGがモルガン・スタンレーに出資した90億ドルがなんと小切手一枚だった事!下巻にはその本物の写真が載っている。ゼロが9個もついた小切手とかなんなの?って感じ。何で小切手になっちゃったかは本に書いてある。それだけ切羽詰まってたって事なわけだが。

というわけで関わった方々は読みたくない記録だとは思うけど、大変面白い本だった。

リーマン・ショック・コンフィデンシャル(上) 追いつめられた金融エリートたち
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リーマン・ショック・コンフィデンシャル(下) 倒れゆくウォール街の巨人
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